(二)この世界ごと愛したい
ひょんなことから、私が幼少期に死を望んでいたことを知ってしまったカイ。
私の望みが“死”であるならば、それを神の力で叶えるのは難しいと。
「…逆に、生命に関係がなければ…可能です。」
「え?」
「私も昔はリンの力を感じた時、嬉しかったんです。この子は色んな人とお話がしたくて、その声が聞きたくて、こんな力を望んだのだと思っていました。」
動物と、植物と、大気と、風と。
声を持たないそんな存在とも話が出来る、心を通わせる幸せに満ちた力だとママは思っていた。
「…でも、リンの様子と成長を見ていると…それは違うのだと悟りました。」
「お嬢の力って、じゃあ何なん?」
「…あれは、拒絶です。」
ママの答えは、一寸の狂いもなく正解。
声を持たない物の声を聞く時に、私は他の全てを拒絶して耳を傾ける。天候を読む時、空気の流れを感じたい時もそれは同様。
私の力の根源は、私の拒絶から生まれる。
「リンは、生まれてから…全てを拒絶していたんだと思います。」
「…なるほどな。」
「そこまでリンが思い詰めるあの炎の力には、きっと私の知らないことがまだあるんでしょう。」
「知らん…かったん?」
「主人とハル、そしてリンもそこには固く口を閉ざすので。私が問い詰めても、リンは苦しむだけでしょうし。」
だからと言って、ハルを問い詰めることもしない。それは、誰よりも私を大切にしているのがハルだと分かっているから。
ハルはいつでも私にとって最良の選択をするから。