(二)この世界ごと愛したい
「俺の読みでは、貴女が戦に巻き込まれない可能性は万に一つもない。貴女の意思に反して必ず戦場に身を置くことになる。」
「……。」
「ハルが貴女を城から出した心情は測り兼ねますけど、この事はハルも知る所。どうせ王座に座らなかったのも、何かあった時に自分が自由に動けるように考えての事でしょうし。」
「…あーもう。本当嫌い。」
トキのお兄さんであるシオン将軍。
私がされたら一番嫌だと思っていることを、トキに味わせるわけには…いかないか。
私は剣を収めてアキトの側に行く。
「アキトごめん。私やっぱり無理。このままじゃ本当に斬っちゃう。二、三日でこの人帰るんならその間外してもいい?」
「あ?シオンを帰せば丸く収まるだろ。トキ何とかしろ。」
そう言われてトキは困り果てる。
現状、シオン将軍か私か選べと二択を迫られているようなもの。
「貴女が俺を嫌う理由が分かったので、とりあえず先にお伝えします。」
「……。」
「もう俺はハルを狙わない。というか貴女のいないアレンデールに興味もない。」
「まるでいつでもハルを討てるみたいに言わないでくれる!?私のハルは誰にも負けませんけど!?」
ハルをもう狙わないと。
この人がはっきりそう言うのなら連合軍の時同様、たぶん本当にそうなんだろう。
「別に貴女達兄妹は互いが互いの弱点。どちらかを取り押さえれば討つのは容易。」
「言い方ムカつくんですけど。」
「でももう仮にハルが例え隙だらけで彷徨いていたとしても討たないと誓います。これで満足ですか。」
「…こないだも思ったけど、本当よく喋るようになったね。」
私のこの人のイメージ、雪のように冷たくてすごいクールで寡黙な感じだったんだけど。
中々によく喋る。