(二)この世界ごと愛したい
みんなのトキさんがパンっと手を叩いて。
この場を収拾。
「はいはい。とりあえずリンとアキトは時間外分の稽古しておいで。その間に俺シオンと話するから。今日の夜はリンここにおいで?」
「トキありがとうー。」
「うん。じゃあアキトとサクよろしくね。」
「はーい。」
私はアキトと二人でトキの部屋を退室。
そして稽古場へ向かいます。
「俺アキトとリンがくっつけばいいと思ってたんだけど。シオンもしかして邪魔する気?」
「それが彼女の意思ならそれで構わない。」
「…無理にリンをどうこうしようってわけじゃないならよかったけど。エゼルタに亡命させるっていうのは割と本気だよね?」
「本気だけど彼女の同意が得られそうにないし、結局ハルが黙ってないし。難しそうだな。」
シオン将軍は面倒そうに天を仰ぐ。
「エゼルタからも召集がかかってるのに。行けそうにない。」
「ここに残る気?」
「…いや、アレンデールに行ってくる。」
「今行ったら鬼人に殺されない?」
連合軍の大将を務め、侵攻しようとした国へ向かうと言うシオン将軍。
ハルだってその件はまだ煮え切らない思いのはず。
「それでもハルに伝えておかないといけない。ついでにアキトにも。」
「伝えるって?」
「…彼女を取り囲んで各国を巻き込む大きい戦が起こる。来年か再来年か、五年後かもしれない。でも必ず起こる。」
「物騒な話だね。」
私が知る限り。
この人ほど先が見える人はいない。
この人ほど戦を読める人はいない。
「彼女を守りたいならソルには絶対に近付けるべきじゃない。」
「…ソルが火種になるならそれほど厄介なことはないよ。あの膨大な土地と人口だし。リンはもう行くって忍者将軍に言ってたし。」
「あー彼女の奔放さは流石に堪える。」
「…シオンがそんなに悩むの初めて見た。」