(二)この世界ごと愛したい
もう何回も思うことなんだけど。
私はやっぱり天才なのかもしれない。
そう思わずにはいられないほど、アキトが今まで一番その力を発揮している。
まだ覚束ない部分はあるけど。それでも剣で戦っていた時と今が同じくらいの力量かな。
完全にこの矛を自分の物にしてしまったら、もう私はとても敵いそうにない。
「お前やっぱすげえな!」
「私もそう思ったとこだよー。」
「天才か!?」
「あ、本当にそれも今思ってたとこ。」
私も確かに天才的なんだけど。
「…私以上の天才がここに来ちゃったけどね。」
シオン将軍。
まだ私は蟠りこそ残るけれども。
ハルをハルと。
そしてハルがその名前を呼び捨てにしている時点で、私の知らない関係性があるのかもと思っていた。
「シオンは確かに強えけど。」
「あれは強いなんてもんじゃないでしょ。」
「俺戦で当たったことねえし。」
「トキがいるから向こうも避けてたんじゃない?」
知らんけど。
トキも兄弟で争うのはやり難いからどうにか回避してそう。
「…お前シオンのこと覚えてねえの?」
「昔会ってるっぽいこと言ってたね。でも残念ながらさっぱり記憶にないよ。どっか他所の国のお姫様と勘違いしてるんじゃないー?」
「勘違い、ね…。」
「それよりアキトはご褒美諦めたのかなー?」
違うことに気を取られ始めたアキトを引き戻し、そこからさらに稽古を続けて。
私に怪我をさせたことで少し遠慮がちになってしまったサクを一喝して半ば強引に稽古させて。
すっかり夜ごはんの時間になってしまった時に、ハナちゃんに呼ばれてこの日の稽古は切り上げることになった。