(二)この世界ごと愛したい
もう三人とも汗だくなので、夜ご飯の前にお風呂に入りたいという話になり。
先に浴場へ向かったアキトとサク。
そして上の階のシャワーを借りることにした私。
シャワーを終えると、いつものようにハナちゃん恒例の可愛いワンピース調の寝衣を準備してくれていたので。好みではないが着るしかない。
「あー疲れたー…。」
アキトは結局ご褒美お預けだったなー。
私が少し警戒して本気になりすぎたのもあるけど。それも時間の問題だろうなー。
そう考えながらみんなが集まっているだろう広間へ入る。
「リンちゃんお疲れっす!」
「今日も可愛すぎる!!!」
「妖精か!?」
よ、妖精…。
一体この人たちに私はどう映ってるんだ。
「リンおいでー。」
「…はーい。」
トキに呼ばれて一瞬躊躇った。
それはそんなトキの側にシオン将軍が座っているからで。
アキトとサクはもう飲み始めてるし。
「怪我したって聞いたけど大丈夫?」
「それより寧ろ私もこの間うっかりしてサクに怪我させちゃって。ごめんね?」
「見ての通りサクは元気だし、リンの怪我の方が俺は心配だけど。」
「私も大丈夫だよー。」
そんなトキの隣に座ると、トキの前に座っているシオン将軍と目が合った。
「……。」
「……。」
目が合っても会話は生まれない。
そんな私たちを見てトキが苦笑いを浮かべる。
「リンちゃんお怪我消毒しよう!」
「ハナちゃん。みんなお食事中だし、移動した方がいいかもしれない。」
「あ、そっか。もう男所帯だから私そんなの気にしたことなかったけど、リンちゃんは流石お姫様だね!」
いや…うん。
もう姫じゃないし。
私とて擦り傷程度ならこの場で適当に流します。トキにここで手当てしてもらったことあるし。
けどこの傷は流石に度を超えてる気がする…。
「リンここでいいよ。誰も気にしないから。」
「あーえっと。けどやっぱ…うーん。」
何回も説明するの面倒だし!この傷に関しては怒られる率高いから嫌なのよ!!!
「リンちゃん腕貸して?」
「…はい。」
…もう諦めましょう。
私はサクにだけ見えないよう気を配り袖を捲る。
「リンそれどうしたの?」
「たまたま古傷の上だっただけ。サクが気にするからトキ静かにね。」
「…うん。」
トキは察しがいいので助かります。
ハナちゃんが手際よく手当てを済ませてくれて、くるくると包帯まで巻いてくれた。
「サクくんを気遣ってくれてありがとう、リンちゃん。」
「どっちも私の不注意だからね。」
「けどあんまり怪我しないでね?リンちゃん女の子なんだからね?」
「気を付けるー。」
手当てを終えたハナちゃんはまたパタパタと走り去っていく。
よし!ご飯だっ!
そう思って正面に向き直そうとした私。
「っ!」
「…失礼。」
私の傷を見学に来たのか。
シオン将軍が知らぬ間に私の近くにいて驚く私。
でも、すぐに離れて元の場所に戻った。
「シオンは本当に口下手だよね。リンが心配ならそう言えばいいのに。」
「心配?シオン将軍が私を?」
「意外?」
「意外っていうか…。それはないんじゃない?私この人に心配される覚えないし?」
大体対連合軍を相手にした時に、この鬼畜が私に何したか忘れてはいない。
とても人を心配する人の打つ手ではなかった。