(二)この世界ごと愛したい



最後に会ったのは神事の日で。


喧嘩せずにちゃんとお別れできたんだけど。問題はこの左腕の傷とか、他にも熱も出したし諸々をジジイが伝えてるんだとしたら…。




「…喧嘩はしてないけど。たぶん怒ってる気がする。」




私の主治医のままいてほしいと私が頼んだ。


そんな私に、いつでも呼んでと言ってくれたレン。なのに声を掛けることもないどころか城を出た後会いにも行かない。




「怒ってる感じはなかったけど疲れてそうだったかな?」


「忙しそうってアキトも言ってたなー。」


「医術制限が撤廃されたお陰でレンは毎日治療に明け暮れてるんじゃない?」


「…そうだといいけど。」




そのまま私への気持ちも薄れてくれるといい。


どうせ私には、一緒に過ごしてあげることさえできないから。





「…敵は多いな。」


「え?」


「…こっちの話です。」


「……。」




シオン将軍も独り言とか言うのか。




「そう言えばリンってシオンのことちゃんと知ってるの?」


「ちゃんとって?」


「鬼人と同じくらい有名じゃん?」


「本当だ。じゃあ私もトキもそんなお兄さんがいて嬉しいねー。」




そう考えるとすごい出会いだ。


たぶん今世界で一、二を争うのはまさにハルとシオン将軍だろうから。



そんな二人の兄弟である私とトキがここにいて仲良くしてるなんて不思議なものだ。





「…シオンに聞きたくない?」


「うん?」


「戦術の話。」


「戦術?」




シオン将軍は寝耳に水のようで。


驚いた顔でトキを見ています。




この人の、戦術の話…。





「俺話せることないけど。」


「だって二人揃ってるとこっちが息詰まるし。とりあえずリンに何か教えてあげれば?喜ぶよ?」


「教えるって…何を…。」




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