(二)この世界ごと愛したい
困り果てているシオン将軍。
その気持ちは察する。
戦術の話なんて突然言われても何をどう話せばいいのか分からないよね。
…しかし。
私がこの人を本当に心からすごいと思ってて、尊敬しているのは事実。
嫌いな人だけど戦術に関してだけ見れば、この人以上の人を私は知らない。
「もうキラキラだよ、可愛いよね。」
「これを俺にどうしろって…?」
「リン、シオンに何か聞きたいことあったの?」
トキが目を輝かせる私に優しく聞いてくれる。
「……お、一昨年の…二月にあった対セザール戦と…。あと同じ年の秋口の対ソル戦で使った特殊陣形について…。あ、もっと前のもいいなら五年前の河川付近の戦いの話とか…」
「ちょっと待って。リンストップ。」
「やっぱ戦の詳細聞くのは国的にだめ?」
「終わった戦だし国的には大丈夫だけど。他国の戦事情を何でそんなに詳しく覚えてるの?」
他国の…というか。
「他国のも自国のもそんなに覚えてないよ。」
「だって今年月まで言ってたよ?」
「シオン将軍のしか覚えてない。私自分の戦だっていつやったかちゃんと把握してないし。」
「そこまでするほど憎かったの?うちのシオンがごめんね?」
それは少し違う。
誤解をさせてしまっている気がする。
「好きで好きで仕方なくて。」
「「…え?」」
「シオン将軍の戦。初めて見た時に感動しちゃって。パパに頼んで至る所からシオン将軍の戦に関する情報集めてもらってたの。ハルに見つかると怒られるから、こっそりだけど。」
「シオンのこと嫌いだって言ってなかった?」
「嫌いだよ。でもやっぱ戦に関してだけは尊敬するし、ほとんどシオン将軍の戦ばっかり勉強して戦術覚えたから。付け焼き刃ですけども。」