(二)この世界ごと愛したい
鷹さんは鋭い爪と嘴。
さらに鋭い目で私を見ている。
…思わず睨み負けしてしまいそう。
「怯えないで。大丈夫です。」
「う…うん。」
シオン将軍が私の腕に、鷹を乗せる。
「うわぁー…。近くで見たら可愛い!」
「可愛くはないでしょ。」
「トキの感性ちょっと変だよ。私より全然可愛いじゃんー。」
「俺が変なの?」
私は腕に乗った鷹が嬉しくて顔が緩む。
こんなに可愛くて優秀な子がやっぱりほしいという欲が溢れる。箱入りが抜けない私。
「あーほしいなー。」
「うーん。野生で捕まえて訓練すれば…出来ないことないのかな?」
「訓練かー…。やっぱ簡単じゃなさそうだね。ゲットできたらどこにいてもトキと文通できそうだと思ったのに。」
「あー何その理由。リン可愛すぎる。」
だから鷹さんの方が可愛いって。
「…エゼルタ遠いしなー。」
「そう言えばリン次行く宛あるの?」
「…本当はセザールにはまだ用があったんだけどね。あんまり私が長居するとご迷惑だから。とりあえず一度は違う国に離れるつもりだよー。」
「リンは人生は本当に大変そう。」
どこに行こうかずっと考えてたけど。
実は次行きたい国は思うところもあって実は決めていたんだが、今猛烈に心が揺れている。
この鷹ほしさにエゼルタも捨て難い。
「うん?」
腕に乗った鷹が私をツンツンと突く。
そして目線を窓にと訴えられた…気がした。
「…トキ、あれも鷹?」
「え?あれは違うんじゃない?」
窓の外に飛んでいる一羽の鳥。
遠目には分からないけど。確かに色が違うから鷹ではないのかもしれない。
それでもこの鷹さんが、私にあの鳥を見ろと言ってる…気がした。