(二)この世界ごと愛したい
「早く。」
「は、早くって言われても…。私空気感で読む方法しか知らないから教えようにもどうすればいいか分かんない。」
「空気感?」
「気圧と湿度と雲の動きと風の向きとか?」
シオン将軍は少し考え込んで。
私の腕から手を離す。
「やっぱりエゼルタに来てください。」
「またその話!?」
「俺が天候読めるようになるまで付き合ってください。」
「そ…そんな無茶苦茶な話…。」
読めるようになるまでなんて、漠然とした期間には容易にオッケーなんて言えないし。
それにエゼルタに行くなんて私もう考えてない。鷹ゲットしたし。
なので意地でも頷かない私に、シオン将軍は次々と質問を投げ掛ける。
答えられることには答えて。
分からないことには分からないと伝えて。
「気圧が下がるのがイコール雨というのは?」
「…絶対イコールじゃないけど。必然的に雲が増えるから雨が降りやすくなる。けど気温も若干下がったし湿度も上がったから明日は間違いなく雨だと思う。」
「気温の変化なんて大して変わらないけど。」
「だから一朝一夕でどうこうなる話じゃないって。私みたいに大半暇して過ごしてたならまだしも。」
長く続く天候の話に、トキはもう話に入る気もなくなっていて。机に向かって何やら書き物をしている。
お仕事中なんだろう。
それでもシオン将軍の興味は完全に私の天候を読み取る力に向いていて、中々諦めてくれない。
「…やっぱり惜しい。」
「天候が気になるのは戦のため?」
「戦にも応用は効くけど単なる好奇心です。」
「うーん。一番手っ取り早いのは私が毎日近くで予測してあげて感覚教えることだろうけど。私ずっと一緒にはいられないしなー。」