(二)この世界ごと愛したい
兎にも角にも、まだ数年大丈夫という話が本当なら猶予はあるっぽい。
「シオン将軍に良い策練ってもらって、ガッカリするような策だったら二手目は私が打つ。アレンデールに出戻って姫として奪いに行ってあげる。」
「せっかく自由になったリンにそんなことさせられないよ。」
「だからもっと早く言ってくれれば簡単だったのに!」
「簡単って…。それにいくらリンでもエゼルタの姫はそんな甘い姫じゃないから。俺はやっぱり関わらせたくないんだけど。」
甘い姫じゃない…か。
どんな姫なのか興味さえ湧いてきた。
「考えが甘いのはトキの方だよ。」
「え?」
「例えどんなお姫様でも、私の需要に勝る姫なんてこの世界にいないでしょ?」
そうなんです。
今は辞めてますけど。需要だけで言えば私はそのエゼルタの姫にも負けない自信がある。
…女らしさでは絶対負けるけど。
「…それは確かに。格好良すぎてリンにならお嫁に行くのも悪くないかもしれないって思っちゃった。」
「でしょ?だからどんな手を使っても絶対守ってあげるから安心して?」
「…その気持ちだけでも充分なのに。リンは本当にやり兼ねないんだもんなー。」
「トキの譲れないものなら私は一緒に守りたい。だからトキはアキト軍の指揮をよろしくね。アキトにはトキが必要なんだから。」
私がそう言うとトキは嬉しそうに笑ってくれる。
私はそれがまた嬉しい。
ただ。
私のこの二手目はあまり使いたい手ではないのが正直なところ。アレンデールをまた危険に晒すし。
恐らく出戻ってしまえばたぶん、私はもうあの鳥籠から死ぬまで出られなくなる。
けど、他でもないトキのために。
もしもの時はそれも仕方ないと割り切って、アレンデールを守る新たな策を練るしかない。
「…貴女がトキの結婚をそこまで阻止しようとするのは何故ですか。」
「逆にシオン将軍がなんで止めないのかが私にはずっと疑問だよ。トキはここにいたいんだよ?」
「それは貴女には関係ないでしょ。」