(二)この世界ごと愛したい



関係はないようで、あるんですよ。


セザールにはアキト軍が必要。そしてそんなアキト軍にはトキが必要。





「…私の道にはトキが欠かせない。」


「貴女の道?」


「まだまだ果てしない、今は荒野同然の道なんだけどね。」


「へえ。それも興味ある話ですね。」




シオン将軍が私を見て聞きたそうにしているけど。


残念ながらまだ教えるには私にさえ不明確すぎて、恥ずかしくてとても言えない。





「またいつか自信を持って話せる日が来るといいんだけど。とにかく今はシオン将軍の策にかかってるので。私に第三の奥の手は使わせないでね。」


「え?リン三手目があるの?」


「あります!最終手段ですが!!」


「どんな手?」




よくぞ聞いてくれました。


トキさん。







「初志貫徹。武力行使で脅迫して無理矢理諦めさせます。」


「あーその手だけは使わせられないねー。」


「ただのお姫様ならそんなことしないけど、第一将である将軍なら遠慮なく脅せます。」


「脅さないでねー。リン穏やかにねー。」




エゼルタの第一将。


私も私で調べてみようかな。どんな性格の悪さなのか気になるもん。




「…ユイ姫は、第一将とは言え貴女の思う将軍じゃない。」




お姫様の名前はユイと言うらしい。


お名前は可愛いけど印象は既に最悪です。





「将軍は将軍でしょ?」


「王族の権力を振り翳しただけの地位。実際には武力も知略も持ち合わせていないただのお飾りです。」


「それで将軍になれるの!?」


「それも王族なだけあって軍が成り立ってしまうので。」




し、信じられない。


武力もなく知略もなく戦場に立てるという、その心情が私には理解が出来ない。寧ろ怖くないのか。




…ある意味傑物では?





「良く分からないお姫様だ…。」


「リンは分からなくていいよ。さっきも言ったけど関わるのも俺は嫌だし…って。ここまで話しちゃったこと俺アキトに言っとかないとまた機嫌損ねるな。」


「私が聞きすぎたー。ごめんー。」


「俺は嬉しくて得したよ。ちょっとアキトのとこ行ってくるから待っててね。」




そう言ってアキトの部屋へ行ったトキ。


残された私とシオン将軍。





「……。」




トキが席を外したことで。


私はある種初めて真剣に考える。





実際、国の政さえ絡む重要な結婚。


私もそんな結婚経験があるので、そこを覆すことの重大さは理解している。




トキにもアキトにも。


もしかするとセザールという国に迷惑を掛けてしまう事態に陥ることも考えられる。





だからトキは私に今まで話さなかった。




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