(二)この世界ごと愛したい
「それ…少し前にも聞いたけど。」
「言いましたから。」
「狼と関係ある?」
「…さあ?」
ここで話が終わってしまうと。
私にこのモヤモヤだけが残ってしまうわけで。
「あー気になる!何なの!?」
「…貴女が忘れるのが悪いのでは?」
「その時シオン将軍をハルが追い出したって言ってたから、たぶんだけどそのせいなの。」
「は?」
ハルには厄介な習性がある。
人は選んでると思うけど、私が男の人と絡むことがあると決まって私に暗示を掛ける。
その記憶を消すように、別の私が興味を惹くものですぐに記憶を上塗りしてしまう。
「…ハルがまた私に暗示を掛けてる。」
「暗示?」
「だから私城内の人とか兵士とか以外の男の人と会話した記憶、ほとんどないの。」
「…アイツやっぱ病気だな。」
思い出したいのに、上手くいかない。
ハルの暗示が強すぎる。
「何その話?鬼人って本当リンへの愛がすごいね?」
「トキおかえりー。」
「ただいま。シオン明日結局どうするの?雨の中アレンデールに向かうつもり?」
アキトのところからトキが帰ってきて。
一体いつから聞いてたんだとシオン将軍がトキを若干睨んだようにも見えたけど。
そう言えばアレンデールに行くって言ってたね。
「…明後日の天気も分かりますか?」
「明後日のお昼前まで降ると思うよ。」
「シオン軍事会議でしょ?やっぱりアレンデール行きは諦めて真っ直ぐエゼルタに行ったら?」
「…アキトに交渉するか。」
シオン将軍は何を考えたのか。
エゼルタからの召集。それも時間が差し迫っているらしいと言うのは分かる。
だけどアレンデールでハルに会うことも諦めたくないらしい。
それを、アキトに交渉???
「…あの。」
「…え、ここで私?」
「貴女の力で俺をアレンデールに連れて行ってください。」
ほう。
この私を足にする気か。
「ちょっとシオン。それは俺も同意できないよ。リンは今俺と雇用契約中だからダメ。」
「次のユイ姫との会合、俺が何とかする。」
「リン、シオンをよろしくね。」
「切り替え早くない!?」
婚約者との会合嫌なのがすごく伝わりました。
けど私行くなんて言ってないし!
それもアレンデールに行くなんて絶対ダメ!!!
「無理無理。私アレンデールには行けない。飛んだら流石に目立つし誰かに見られたくないし。第一私は便利な移動手段じゃないんですけど!?」
「近くまででいいです。」
「わざわざハルに会わなくていいじゃん!一体なんの話するつもりなの!?」