(二)この世界ごと愛したい
「ハルを巻き込むなら私も黙ってられません!大体ちょっと無礼すぎ…る……。」
あれ?
暗示が掛かったはずの、記憶。
垣間見える、銀色の君。
『あんた何泣いてんの?』
『泣いてないし!あんたじゃないし!私姫なんですけど!』
『じゃあリンって名前の姫ってあんた?』
『ぶ、無礼すぎる!態度改めて出直してきてください!!!』
記憶の欠片。
断片的なものだけど、やっぱり私はシオン将軍に出会っていたようです。
微かなその記憶から思い出すその頃は、よりにもよって私が一番荒んでいた時期でもある。
「リン?どうかした?」
「…え?あ、何でも…ない。けど、とにかく!ハルを唆して出陣させるなんて絶対ダメだからね!?」
急に黙り込んだ私に、不安そうに声を掛けてくれたトキ。
「じゃあ明後日よろしくお願いします。」
「だから私は行きません!」
「午後からでいいんで。」
「話聞いてる!?」
シオン将軍は言いたいことだけ言ってトキの部屋から出て行ってしまう。
流石は鬼畜。
もう横暴さが度を超えてる。
「トキー…。」
「シオン色々先読みしすぎて周りはよく置いていかれるんだよね。ごめんね?」
「凄すぎる人だからこそってことかー。」
「リンの憧れをまた壊してないか心配だけど。シオンって意外と一途なんだって分かったよ。」
一途???
「昔一人の女の子に出会って、シオンはその女の子を救いたいからってずっと頑張ってたのを俺は見て来たからね。」
「……。」
何となく私のこと何だろうと思った。
城から出たいと泣いていたあの頃に出会った人。その城の中でも私の部屋に現れた人。
「…そりゃ同情したくもなるか。」
「同情?」
「私はシオン将軍と会ったことあんまり覚えてないけど、私が泣いてたならきっとそうだよ。」