(二)この世界ごと愛したい




「…おーちゃん。」


「…別に、アレやぞ。お前のためとちゃう。アレや…火事の…働いた報酬や。」



火事で私がしたことなんて、たかが知れてる。


ミケさん助け出したくらい。


燃え盛る建物を前に、ただ力及ばず崩壊させてしまっただけ。




「あの火、全然熱くなかったのお嬢がやったんやろ。」


「…ごめん。」



人命救助出来たとは言え、本来建物だってすぐに鎮火すれば建物も崩れなかったと思うし。


風船もちゃんと自分で持ってれば良かったし。




「何に謝ってんねん!?」


「怒らなくてもいいじゃん!?」


「さっさとコレ持てや!俺が恥かくやんけ!」


「すっごい似合ってますけど!?」



風船大量に持ったおーちゃん。


それはもう可愛いの塊。




「こんの…人が黙って買ってやれば…!」


「何かよう分からんけど仲直りしーや。俺ちょっと上に荷物取りに行って来るわ。」



カイがパチっとウインクして去る。


…その姿、正にイケおじですね。





「……。」


「……。」



だけど、このまま残されたって。


どうしていいか分からないのはお互い様で、カイがいなくなったことで余計に重い空気が流れる。




「…お金返す。」


「は?」


「風船代。後腐れない方が良いじゃん。」


「…分かった。」



私はるうのお小遣いの残りをまた丸っと渡す。




「多いわ!」


「いくらか分かんないもん。」


「…これでええか。」



いくらかお金を抜いて私にまた戻って来たお金。


これであとどれくらい生活出来るんだろう。もう結構豪遊してる気がするけど。



そして大量の風船をゲットした私。




「じゃ、私研究するんで。」


「研究って風船のか?」


「そう!中の気体について知りたいの!」


「…知ってどうすんねん。」



どうもしませんけど。


たぶん何の役にも立ちませんけど。





「私は何にも知らないから。今まで知れなかったことを今更追いかけてるだけだよ。」


「あー城にずっとおったってカイが言うてたな。」


「…それなりに楽しんでたけどね。」


「脱走癖あるくらいなら元気にしとったんやろ。」



それはもう元気元気。


元気すぎるがあまり、捕まえる方も大変だったんだろうけど。ミケさんを探しててそんなことに気付きました。




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