(二)この世界ごと愛したい



「お嬢の魔女の力がなかったら、たぶん逃げ遅れた人間は助けられへんかった。」


「やっぱ凄い力やねんな。」


「…本気出せば一瞬で消火出来たやろうな。」



それはその通り。


あれくらいの炎であれば簡単です。




「でもカイに迷惑やからって、それもせんと周りにバレん程度だけに留めて。街の人間とコツコツ消火して。」


「……。」


「死傷者はおらん。それだけで街の人間と俺は喜んどったのに、お嬢だけが腑に落ちん顔しとった。本来もっと被害は抑えられたって悔しそうやった。」


「……。」


「ここはお嬢の国でもないくせにな。やっぱアホやなって思った。」




結局、私はアホに着地するらしい。


カイはその話を静かに聞いているだけで、特に何も言わない。




「やから、お嬢のことは好きになれんって言った。」


「…は?」


「俺はやっぱヒマリだけやし。」


「…いや、そうやとしても…好きになれんとかお嬢に言うたらあかんやろ。」



おーちゃんは本当にヒマリさんと言う女性を想っていて、だからカイに唆されたところで私を好きにはならないと。


それを伝えたことをカイは咎める。




「事実やし。後腐れたくないってお嬢が言うたから、俺もそうしよう思て。」


「…呆れた。」


「なんでやねん。」


「…こらあかんな。お前を甘やかして可愛がっとる俺の責任でもあるんやけど。」


「甘やかされた覚えないわ。」


「…このままじゃお嬢に申し訳立たんわ。」



カイはまた溜め息を吐いて。


どうしたものかと考えて。






「…ちょっと時間くれ。それまでお前、お嬢とは関わらんでええよ。」


「え?」


「俺は、お嬢だけは傷付けるわけにはいかへんねん。」



カイの真剣な表情に、おーちゃんは何も言えず。


ただ私と関わらなくて良いと言われた事実に、少し安堵している。




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