(二)この世界ごと愛したい
「昨日お嬢に失礼なこと言ったオウスケはしばらく来えへんから、二人で頑張ろな。」
「失礼?言われたっけ?」
「…そかそか。お嬢が気にしてへんならええねん。」
何のことかさっぱりです。
私が結局風船を割ることも出来ず佇むので、カイがお風呂入って下に降りろと声を掛ける。
「コーヒー淹れて待ってるで。」
「うわ、カイが神様に見えるー。ありがとー。」
コーヒーに心打たれ、私はどうしようもない風船を一旦また天井に放してシャワーを浴びる。
おーちゃんはしばらく来ないのか。
それも私がここに来てしまったせいだとしたら、おーちゃんは更に私を嫌になるかもしれない。
「…困ったな。」
ここは私にとって好条件な拠点になりそうだったけど。おーちゃんの気持ちを無視して居座るわけにもいかないし。
やることを済ませて下に降りると、コーヒーの良い香りがする。
「…ん?」
「お嬢どうしたん?飲まへんの?」
カウンター越しにカイがそう聞く。
私が疑問に思ったのは、何やら王都内に不穏な感じの気配を感じ取ったから。ここの護衛の人じゃない。
「…飲むー。」
どうしようかな。
狙われてるのが私なのかカイなのかはっきりしない。
「お嬢髪の毛ちゃんと乾かさな。」
「長くて面倒なのー。」
「その長さやと確かに大変やな。けど、お嬢の髪綺麗やから切るのは勿体ないな。」
「切らないでって言われてるから今のところ切る予定はないかなー。」