(二)この世界ごと愛したい
実のない話をしながら気配を追う。
やはり徐々に近付きつつある。
「…カイ、ちょっと待っててー。」
私は上に剣を取りに行って帯剣して戻る。
数はそんなに多くはないけど、不穏な感じはやっぱり拭えない。
「お嬢?」
「…何か入り込んでる。カイ、出来たら護衛の人中に入れてて。私が外に出るよ。」
「オウスケのおらん時に…。王都に入れたってことは狙いは俺やろうな。護衛に任せたらええよ。お嬢がここにおり。」
「カイ慣れてるねー。」
特に慌てることもなく。
もうこれが日常ですと言わんばかりの平常心で、淹れ終えたコーヒーの後片付けをしている。
「仕事柄恨まれるんはしゃあないわ。お嬢昨日から事件続きでごめんな。」
「今日のお仕事は護衛ですね!しっかり働きます!」
「オウスケとは違って素直やなー。感心するわ。」
よしよし。
二日目のお仕事も頑張るぞー。
そう決めた私はここへ近付いてくる気配に集中する。集中すれば嫌でもその力量が明らかになってくる。
「…何かそこそこ強そうだけど。」
「…外ヤバい?」
「外の護衛の人の力量知らないけど、やっぱ私が行く方が無難かも?」
「お嬢に迷惑掛けっぱなしやな。」
迷惑だ何てとんでもない。
「カイのご飯とコーヒー美味しいし。みんなのお話も楽しいし。泊めてもらってるし。これくらいお安い御用だよ。」
「ええ子すぎるっ!」
「…生け取りとか指示があれば対応するから言って?」
「お嬢は神なんっ!?」
そういや戦神やったと、カイが一人で言いながら。
私への指示については何もないんでしょうか。
「…全部殺さんようにって可能か?」
「やってみる。」
私はその指示を聞いてすぐに酒場を出る。
辺りには刺客と思われる人が数人。それに立ち向かわんとする護衛の方々。