(二)この世界ごと愛したい



私もスピードにはそれなりの自負があるので。


追いつけないなんてことはなく。



有り難いことに相手も刺客なので人通りのない場所を逃げてくれるから、私はなんの憂いもなく斬れる。殺しませんが。




「ぐ…う。」


「ごめんね。けどなんでまたカイを狙ったの?どこの国の人?」


「……。」


「徹底して何も言わないんだねー。」



口を割る気がない以上、私がこれ以上何を言っても無駄だろうと思った。


そして私はこの一人をどうしようか悩む。


流石に抱えて酒場に戻れないだろうし、かと言って誰か呼びに行ってる間に逃げられるかもしれない。





「…お嬢様!」



運良く護衛の方が駆け付けてくれた。


カイの計らいだろう。




「あ、助かったー。この人も酒場に連れて行けるかな。」


「こちらで対応します!お嬢様ありがとうございます!」



私は護衛の方に刺客を託して、一人で酒場に戻ろうと思い歩き出す。



けど、ここで更なる事件が私を襲う。





「待ちなさいっ!!!」


「…へ?私?」



街人だろう数人の女性たちに囲まれた。




「オウスケさんに言い寄ってる女ってあなたでしょ!?」



違うわ!!!


言い寄ったことないわ!!!




「…人違いかと思いますけど。」


「惚けるんじゃないわよ!こっちは全部分かってんのよ!ちょっと顔貸しなさい!!!」



分かってないよ!!!


次々降り掛かる災難に、私は悲壮感を漂わせながら女性たちに大人しく捕まりました。



逃げようと思えば逃げれたんですけど、何やら勘違いさせたままでは今後も同じことをが起こり兼ねないのでここで弁明させてもらおうと考えた。




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