(二)この世界ごと愛したい
同じ地獄の出身だなんて、とんでもない。
おーちゃんの方が遥かに深い悲しみの底にいるんじゃないだろうか。
「…それを知ってて、何で一人で戦わせようとするの。」
「はあ?」
「王様にも腹立って来たなー。」
「…もういいわ。とりあえずあなた、しばらくはオウスケさんに近付かないようにね。」
ドンっと肩を押される。
女性の力なのでたかが知れてるけども、その途端に暗転した視界。
灯りのないこの倉庫に唯一光を送っていた入り口が、閉ざされた。
「…え。」
「そこで大人しくしてなさい。オウスケさんの気を引こうとした罰よ。」
だからそんなことしてないって!!!
扉の向こうから聞こえる声に心の中で叫ぶが、悲しいことにキャッキャと笑う女性たちの笑い声が遠のいていく。
「…もうー。」
めんどくさ。
女性問題マジでめんどくさ。
倉庫にまんまと閉じ込められた私は、暗闇で特にやることもなく。
窓もないので脱出経路はこの閉ざされた扉だけ。
ダメ元で開けてみようと試みるが意外と強固な扉で、鍵も掛けられているので開かない。
「……寝よう。」
夜の酒場の営業までにカイのところに戻れるといいなーと。
他人事のように考えながら。
不貞寝してやりました。