(二)この世界ごと愛したい
そんな私が戻らないカイの酒場にて。
最後の逃げた刺客を託された護衛がカイの酒場に戻り、刺客たち全員城に移送しようという話になったようで。
護衛たちが移送のためにカイの酒場を離れることになった。
「…お嬢遅いな。」
「私より先にこちらへ戻って行ったように思ったんですが。」
私の帰りが遅いとカイが心配して。
最後に私と言葉を交わした護衛がそんなカイに説明する。
「あーまた面倒事かい。」
「捜索隊出しますか?」
「…いや、あの子のことでは出来るだけ騒ぎにしたない。」
どうしようかと。
悩むカイの元に、どうやら暇を持て余した人が戻ってきた。
「カイ!?なんやこれ!?」
傷を負った刺客たちを見て声を大きくするおーちゃん。
「オウスケ、お前家帰ったんちゃうんかい。」
「…帰ったけど。何してええか分からんかったから戻ってみてん。」
「お前は働き蟻やな。」
「そんなんちゃうわ。それよりこれ…お嬢がやったん?」
撃退された刺客たちを見ておーちゃんがカイに聞く。
カイはそうだと肯定。
「けど、最後の一人追ったままお嬢が戻ってへん。」
「はあ?」
「お嬢に限って心配いらんやろうけど…って、オウスケ!」
カイが話終わる前にこの場から駆け出したおーちゃん。
誰かのピンチにすぐに駆けつけようとするその姿勢は、本当にヒーローのよう。
「俺が行こう思ったんやけどなー。」
そんなカイの言葉にぎょっと驚く護衛の人。
冗談やとカイは笑って。
「ほなお嬢のことはオウスケに任せよか。移送だけ頼むわ。」
そう言って僅かな護衛だけを残し、他の全員がこの場を離れることになった。
私を探しに走り出したおーちゃんを見て、カイはどこか嬉しそうに笑う。
「…頑張って乗り越えや、オウスケ。」