(二)この世界ごと愛したい




「カイまさかお嬢を売ったん?」


「人聞き悪いな。昨日は指一本触らせてへんわ。」



またまた珍しいことに。


おーちゃんがカイに怒っている中、私はお客さんの隣に座らせてもらってまた昨日みたいに色んなお話を聞こうとワクワクしている。






「…指五本で触っとるやん。」



お客さんはビックリ。


勿論私もビックリ。



席に座っていた私を、有無を言わさず抱き上げたおーちゃん。




「お、オウスケさん!?」


「堪忍な。このお嬢、今は俺のやから奢らんでええよ。」



だ…。


誰が…誰のって!?!?




「ちょ…まっ、おーちゃん!?」


「お嬢はここに座っとき。」



抱えた私を一番奥の席に座らせて、自分がその隣に陣取る。




「オウスケ営業妨害すな。」


「お嬢の飲み代くらい俺が出すわ。」


「ならええ。」



良くないよ!!!


私はここで色んな話が聞きたいのに!!!




「あ、あのさ…おーちゃん。私みんなのお話聞きたいんですけど。」


「ここおっても聞こえるやろ。」


「そうかもだけど。急にどうしたの?おーちゃん変だよ?」


「俺のこと守ってくれるんやろ?」




…ほう?


言ったよ。確かに言った。



おーちゃんがちゃんと立ち直ってこの先を前向きに生きていけるようになると嬉しいから。


ハルやるうみたいに支えてあげれるかは微妙だけど、頼りないかもしれないけど。それでもそんなきっかけくらいになれればなって思ったよ。


おーちゃんに一身にのしかかる重圧を、少しは軽くしてあげられたらなって考えてるよ。




…でも。




「今じゃないから!」


「無責任。」


「だって今出来ることなんてないし!」




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