(二)この世界ごと愛したい
「やっぱいい子だー。」
「へ…っ!?」
トキが嬉しそうに笑って、私に飛びつく。
前回王宮では受け止めきれずに倒れたけども、今日はなんとか頑張って耐えました。
「…本当にアキトとリンがくっついてくれたら、俺も嬉しいなー。」
「…え?」
耳元で聞こえた、小さな小さなトキの声。
たぶん私にしか聞こえなかった声。
「…なんてね。」
「……。」
「俺の勝手な理想だから気にしないで?」
「は…はい。」
気にしないでって言うなら、初めから言わないで欲しかった!!!
なんなのその理想!!!
「あーこれも言っとかなきゃ。」
まだあるの!?
私から離れたトキは、真っ直ぐ真剣な目で私を見つめています。
「リン、まさかタダでここに住めるとは思ってないよね?」
…誰か、助けてください。
心からそう願って、私はアキトに助けてと目で訴える。
交わったはずの視線はすぐに逸らされる。
この薄情者っ!!!!!
「…えー…と。お、おいくら…?」
「可愛いリンからお金は取らないけど、代わりに明日から働いてくれる?」
それはつまり、お城のお手伝いさんをしたらいいのかな?
私、家事的なこと壊滅的に出来ないけど。逆に迷惑にならないだろうか。
と言うか私遊びに来ただけなのに…。
「軍の強化を図りたいんだ。」
「へ?」
「毎日朝だけでいいから、全員鍛え上げてくれない?」
周囲は騒めく。
でも私は悪い癖が発動し、このトキの目論見の先を無意識に読み取ってしまう。