(二)この世界ごと愛したい



「全然俺の言うこと聞いてくれないね?」


「う…。ごめんなさい。」


「トキのお兄さんと出掛ける予定って戦のこと?こんな状態のリンを戦に連れて行ったの?」


「し、シオンとは宿で別れて…戦場には私一人で…行きました。」



シオンにまでとばっちりで申し訳ない。




「つまり、俺に止められると思って二人で出し抜こうとしたんだね。」


「い、言い方が…けど、仰る通りです。」



ぐうの音も出ません。


言い訳も弁明もこれと言って浮かびません。手詰まりです。




「…分かってたよ。」


「え?」


「こうして再会しても、嬉しいのは俺だけで。リンにとっては特別なことじゃない。」



悲しそうに翳る紺碧の瞳が、また私を揺らす。




「そんなこと…」


「あるよ。昨日会わずに今日の約束を取り付けなかったら、今リンはここにいない。」


「それは…。」



確かに、そうかもしれない。


本来なら戦場で為すべきことを為した後、カイの酒場に引き返すつもりだったのは事実。




「こんな卑屈なこと言ってたら、リンは余計にここには寄り付かなくなっちゃうね。ごめん、忘れていいよ。」


「……。」


「こうしてちゃんと来てくれたし、会えたから。今は本当に満足してる。」


「…ん。」



私は何を伝えればいいのか分からず、横になったまま返事をして身体を丸める。


…とにかく今は寝よう。




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