(二)この世界ごと愛したい
熱と疲れが重なり、さっきも少し寝たにも関わらずすぐに眠ってしまった。
そんな私の髪を撫でながら、レンが儚く笑う。
「…リン。」
そう名前を呼んでも。
近くにいるはずの私がまだ遠く感じてしまう。
それは私も同じだった。
セザール王宮で過ごした最後の日。あの日は誰よりも近くに感じたレンの存在が、今は遠い。
そうしてしまったのは私だと分かってる。
ただ、分かってはいても。
どうして紡ぎたい言葉は出て来ないんだろう。
「レン様っ…あ。」
「うん、静かにね。どうしたの?」
先程とは別の、一人の女官がレンの元を訪ねる。
「患者様です。お越し願えますか?」
「分かった。」
「…その方は?」
「風邪だよ。安静にしてればこれ以上は酷くならない。」
「…そうではなくて、レン様とどういうご関係ですか?」
婚姻関係が破綻した今。
私との関係性を問われると返事に困るレン。だけど、一つだけはっきりしていることがある。
「片想い中の相手だよ。」
「えっ?」
「…とにかく行こうか。向かいながら症状聞くね。」
レンの言葉に驚きを隠せない女官。
そんなこと気にせずに颯爽と部屋を出て歩き出す。
それから私に関して何も言えなくなってしまった女官は、暗い表情でレンを患者の元へ案内。
医術師としての勤めを果たし、患者の対応を終えたレンはまた急ぎ足で自室へ戻る。