(二)この世界ごと愛したい
思わず笑ってしまう私を、アキトが怪訝そうに見ているけど。
そんなことも気にならないほどに、自分の演技力を自画自賛しています。
「あれ、アキトさんじゃねえか!」
「んあ?」
「また戦勝ったって聞いたよ!流石アキトさん!頼もしいぜ!」
「…まあな。」
お客さん達に囲まれてしまった。
私はあなた達が噂してた魔女なんですけども。
「それにしても今度の彼女は一段と別嬪だなあ!」
「アキトさんも早く身を固めねえとな!早くお世継ぎの顔が見たいもんだ!」
だから彼女じゃないって!!!
「嬢ちゃん!アキトさんに泣かされたらいつでも俺のとこ来いよ!嬢ちゃん別嬪だからなあ!!」
「…あー、はい。」
「抜け駆けすんなよ!嬢ちゃん俺も空いてるぜ!」
「お気遣いどうもです。」
アキトはもう大人気で。
私がこの男性陣に囲まれた隙に、女性陣がアキトの周りを固めている。
…全然ゆっくり出来ない。
「それにしても綺麗な髪だなあ。」
一人の男性客が私の髪に手を伸ばす。
「誰の女に触ろうとしてんだよ。」
女性客を押し退け、アキトがそれを阻止。
「もう飲んだな?」
「え、うん。」
「じゃあ行くぞ。」
アキトは呆然とするお客さん達を気にも止めることなく、ちゃんとお代を置いて。
そして私の手を握って店外へ出る。