(二)この世界ごと愛したい
レンの言葉に逆らえる気もしない。
そのまま目を閉じた私の意識は、言霊の如く遠のいて行く。
本当は眠りたくない。
本当はもっと、レンと過ごすこの時間を、味わっていたかった。
「れ…ん。」
「大丈夫。ちゃんとここにいるから。」
…ここにいると。
私も色んな人に安心してほしくて伝えることが多い言葉。
言われる側になってみると、嬉しいし心が落ち着く。
私は知らず知らずのうちに自分が求める言葉を人に伝えて、そこに安心していたのは自分自身だったのかもしれない。
完全に意識を手放した私を、レンはしばらく見つめたまま。
「お嫁さんが可愛くて仕方ない。」
結婚話は、ほとんどなかったことになっていることもレンは知っている。
けど、今後もう妻は娶らないと決めているレンにとってはやはり私が最初で最後の結婚相手。
「…また…会えなくなるのか。」
明日。
パルテノンに行き、ここに戻れば。
再び私は私の道を歩み出す。会えない時間が、また訪れる。
仕方ないことだと分かっていても、それでも寂しさは襲い来るもの。
「本当に…吸い込めたらいいのに…。」
お互いに、人を惹きつける私とレン。
そこに二人とも自覚はあまりなく。
意識していないところで互いさえも、惹き寄せていく。
伸ばした手は、まだしっかりとレンに回されたまま。
夜明けを迎える。