(二)この世界ごと愛したい




「…アキトは馬鹿だね。リンたぶんここに入り浸るよ?」


「しまった。」


「あ、綿飴美味しそう。」




ひょいっとアキトからトキが綿飴を奪う。




「……。」


「…リン?大丈夫?」



この部屋を目の当たりにしてしまっては、もう言葉も出ない。


とにかく手当たり次第、漁れるだけ漁りたいと疼く身体を必死に抑えている状態の私。




「…俺部屋に人入れるのあんまり好きじゃないんだけど。」


「…う…ん。」



そりゃあそうだろう。


軍師はその至高の頭脳こそが全て。



そんなトキの頭脳が、この部屋に収められているということ。それを人に晒すなんて以ての外。






「リンおいで?」


「いや…で、でも…。」


「見ちゃったら気になるよね。俺も同じだったから分かるよ。」


「う…。」




トキの頭の中を覗いてしまうようで。


申し訳ないのと恐れ多いのと、意外と謙虚な私の足は前に進まない。





「トキがいいって言ってんだから大丈夫だ。」


「本当に見られてマズい物はここには置いてないから、少しならいいよ?」



アキトとトキが二人揃ってそう言ってくれるもので、お言葉に甘えることにします。






「嬉しいー…。」



私は思わず顔が緩み、トキの部屋に足を踏み入れた。






「うわー精巧な地図。しかも何この印!え、もしかして攻め方パターン先読みしてる!?すごいっ!!この本借りてもいい!?模型もしかしなくても動かせるんだ!?何これ楽しい!!!」





もう手も付けられない程。


私は、一人で大興奮しています。





< 70 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop