(二)この世界ごと愛したい
「…アキトは馬鹿だね。リンたぶんここに入り浸るよ?」
「しまった。」
「あ、綿飴美味しそう。」
ひょいっとアキトからトキが綿飴を奪う。
「……。」
「…リン?大丈夫?」
この部屋を目の当たりにしてしまっては、もう言葉も出ない。
とにかく手当たり次第、漁れるだけ漁りたいと疼く身体を必死に抑えている状態の私。
「…俺部屋に人入れるのあんまり好きじゃないんだけど。」
「…う…ん。」
そりゃあそうだろう。
軍師はその至高の頭脳こそが全て。
そんなトキの頭脳が、この部屋に収められているということ。それを人に晒すなんて以ての外。
「リンおいで?」
「いや…で、でも…。」
「見ちゃったら気になるよね。俺も同じだったから分かるよ。」
「う…。」
トキの頭の中を覗いてしまうようで。
申し訳ないのと恐れ多いのと、意外と謙虚な私の足は前に進まない。
「トキがいいって言ってんだから大丈夫だ。」
「本当に見られてマズい物はここには置いてないから、少しならいいよ?」
アキトとトキが二人揃ってそう言ってくれるもので、お言葉に甘えることにします。
「嬉しいー…。」
私は思わず顔が緩み、トキの部屋に足を踏み入れた。
「うわー精巧な地図。しかも何この印!え、もしかして攻め方パターン先読みしてる!?すごいっ!!この本借りてもいい!?模型もしかしなくても動かせるんだ!?何これ楽しい!!!」
もう手も付けられない程。
私は、一人で大興奮しています。