(二)この世界ごと愛したい
そう呟いた私を、おーちゃんが怯えたように見る。
別に何もしませんよ。向こうが私に何もしない内は、私もその方が都合が良いので。
「お嬢とりあえず城はまた今度。今はさっさと用済ませて戻るで。」
「はーい。」
用とは言っても、目的はないので。
城下町をぶらりとおーちゃんに案内してもらって、建ち並ぶ商店を眺め、物珍しくて楽しく歩いた。
「アレンデールの進軍が始まったぞ!!!」
街の人達の騒めく声が聞こえたので、私は思わず足を止めてしまう。
「相手はソルらしい!鬼人の復帰戦だなあ!おっかねえ!」
「ソルも中々の粒揃いだが忍軍の内輪揉めのこんな時で、苦戦するだろうな。」
「アレンデールが優勢だろう!率いてるのが何せ鬼人だ!負けるわけがねえ!」
私は小さく溜め息を溢す。
早めの出陣は予想していたが、思ったよりもハルの行動が早すぎる。
「…リン。」
「へ?あ、ごめん。大丈夫だよ。」
「お兄さん心配?」
「まさかー。ハルはどうせ負けないし。」
心配そうにレンが声を掛けてくれるが、本当に心配はしてない。
ハルが急いでいる理由も分かってる。
…ただ。
「出陣前に、一目会いたかったなー。」
いつもは必ず見送っていたもので。
それが出来なくて、情けなくも自分勝手にそんなことが寂しいと思ってしまっただけ。
「お嬢も可愛いとこあるんやな。」
「え、リンは可愛いとこしかないよ?」
「…可愛くない時もあるやろ。」
「例えば?」
「…生意気やし、血の気多いし、戦神やし。」
「全部可愛いよね。」
話にならないレンにおーちゃんは呆れるしかない。
私は何も言えませんよ。レンのペースに巻き込まれるのは嫌です。