(二)この世界ごと愛したい
みんなで仲良くティータイムを過ごして、私はダラダラと机に突っ伏して地図を眺めている。
ソルの国境まで軍の足だと二日はかかる。
開戦は二日後。ソルの敵将はかなり非道な人。罠でも張られていたらハル気付けるかな。シオンも無傷じゃ済まないかもって言ってた。
いやいや、考えるだけ無駄だ。どうせハルのことだから、猪突猛進真っ直ぐに…。
「はぁ…。」
私どうやってハルの帰りを待ってたんだっけ。
「考え込んだかと思えば、悲しそうにしたり怒ったり落ち込んだり。今日のお嬢は忙しないなー。」
「カイ、私この戦の情報買いたいー。」
「お嬢はほんま可愛えな。任せとき、細かく報告入るように手回すわ。」
「心配してるんじゃないからね!?ハルは絶対に負けないんだけどね!?」
私の頭をぽんぽんと子供を宥めるようにカイが撫でる。
その様子を見ていたおーちゃんが、不思議そうに声を掛ける。
「こんなこと何度もあったやろ?今までどうしてたん?」
「…どう、してたっけ。」
「はあ?」
「…あ。」
そうだ。
ハルが戦に行く時は、いつもるうが側に居てくれて。ずっと一緒に過ごしてくれていた。
「ねえ、リン?」
「はい?」
「帰りに少し寄り道しても良い?」
「へ?どこに?」
「王宮。」
レンに王宮に寄ってくれと頼まれた。
…どいつもこいつも。
最近私は便利な交通手段になりつつある気がするんですけど。病み上がりなんですけど。
「忌まわしい思い出の場所に連れて行くなや!?」
「「え?」」
突然大声を張り上げたおーちゃんに、また咄嗟にレンと言葉が被り漏れた。
「お嬢が思い出して辛くなるやろ!?」
「…えっと、私別に…」
「お前の都合で酷いことすな!?」
「うん、おーちゃん落ち着こうか?」
不思議とおーちゃんが怒ってくれている。
有り難いことだが方向性が大きく間違っている気がする。