(二)この世界ごと愛したい



「…ま、俺が教えられることは一つしかないんやけど。」


「うん!何でもする!」


「まずは仕事落ち着いて鍛冶屋行ってからやな。それまでは何も出来ひんから。」



と言うことらしいので。


そんな有り難い提案を受け入れて、今日はこのまま酒場の営業時間を楽しく過ごした。



またもや私の隣はおーちゃんに陣取られ、お客さんとの会話は出来なかったが。新たにまた知れることがあったし、楽しく過ごせた。


過ごせたんだけども。



病み上がりな上、飛んでの移動もあり。私の体力の底が見えて来てしまう。




「お嬢?」


「…んー。」


「眠いん?」


「んー。」



営業終了後、カイがお片付けしてる中。


おーちゃんが心配して声を掛けてくれるが、その通り。もう眠くて眠くて仕方ない。




「オウスケ、お嬢上に連れてったり。」


「…世話焼けるなあ。」



おーちゃんが私の腕を引いて、そのまま上の階へ。




「お嬢っ…?」



覚束ない足取りでの階段で、躓いた私を咄嗟に支えたおーちゃん。


凄まじい反射神経です。




「危ないし手かかるし。難儀な救世主やな。」



ふわっとその場で私を抱き上げる。




「おーちゃんごめん。」


「…ええよ。」



こんなに可愛いのに。


私を抱えるおーちゃんは、やっぱり男の子だなと思えてならない。



ヒマリさんがおーちゃんに惹かれたのは、こんなギャップに胸打たれたのではないかと考察してしまった。




「おーちゃんはずるいね。」


「っ!」



私がそう言うと目を見開いたおーちゃん。







『オウスケはずるい。』


『はあ?』


『急に格好良く変身するのね。』


『してへんわ。』


『オウスケのそんな姿、私以外に見られる人は今後現れるかしら。』


『おらんやろ。』


『…もし現れたら……』




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