(二)この世界ごと愛したい
急に固まって動かなくなってしまったおーちゃんを心配したいのは山々なんだが。
私ももう限界に到達し、悪いと思いながらも瞼は落ちていってしまう。
「…ヒマリ…、そうやな。」
眠った私を見て小さく呟いた。
『…もし現れたら、一緒に守り抜きましょう。私、沢山お話がしてみたいの。』
奥の部屋のベッドに寝かせて、記憶の中のヒマリさんを思い出しおーちゃんは笑う。
「話はさせてやられへんな。」
ヒマリさんの剣に触れる。
「残念ながら、守ってやらなあかん程弱くもないし。何なら他にも守る人間は山程おりそうや。」
私をただ、見つめるおーちゃん。
だけど話している相手は私ではない。
「けど、そうやな。俺しかおらん時は、俺がやらなあかんか。」
極力、剣を振らずに済むように。
そうやって過ごして来たおーちゃんは、ある決意を固めた。
「状況次第では、またウサギになるしかないな。」
可愛い小動物である兎は、時に目にも止まらぬ速さで地を駆けることもあるらしい。
世界一の双剣の剣士。
私のまだ知らないおーちゃんの異名は、瞬兎。
「堪忍な、ヒマリ。」
それが恋かはまだ分からない。
「このお嬢、目離されへんねん。」
だから、その力を借りて一緒に守ろうと。
おーちゃんはそんなことを考えたらしかった。
『オウスケの答えを、私はいつだって応援するからね。』
「次は絶対、死んでも守ったる。」