(二)この世界ごと愛したい



落とさせた城自体が、そこにハルを誘い込む罠だったんではないかと私も思った。




「もう…。下調べもせずに焦って進軍するからこうなるんだよー。ハルの馬鹿。」


「じゃあ状況ヤバいん?」


「…ハルなら何とかすると思うけど。」



嘘ではなくて。


本当に、ハルならきっと軽々突破出来る罠だと思う。




「あと、得意先から来店予約入ったで。」


「うん?」


「軍師兄弟。いつもよりタイミングかなり早いけど、これもお嬢効果やろか。」



つまり。


シオンとトキがお客さんとしてお店に来る。




「…ヤバい!それいつ!?」


「明後日やな。オウスケも明日には帰って来るけど、お嬢はどないする?」


「うっ…。」



出来ることならまだ会いたくない。


しかし避けていても仕方ない。




「そんなに悩む程のこと白狼にされたん?」


「問題はシオンじゃなくて…。どうしよう。カイお金貸してくれない!?」


「金?」


「…トキに仲直りの賄賂、準備しなきゃ。」



とりあえず、二人の来店予約は可として通してもらって。


私はカイにお金を借りて、カイと一緒に街でトキへのお菓子を大量に買い込んだ。



どうにか、ディオン攻略を妨害したことを許してもらわねば。





「開店前に付き合わせてごめんね!」


「気にせんでええよー。お嬢と買い物行けて俺も楽しんだし。」


「お金も適当に私の仕事分から引いててね!」


「お嬢まだ報酬一回も渡してへんのに、よー働いてくれるから俺は助かるわ。」



元からそう言う契約だし。


一ヶ月分のお給料で寧ろ悪いとさえ思ってる。




「こんな災いの火種を拾ってくれて、置いてくれてるだけでも私は感謝してるの。」


「…安いもんやて。」


「安いか高いか、その辺の金銭感覚はまだ覚えられないけど。そろそろ私も情報の扱い方、分かってきたよー。」


「風雲児になるんやったっけ?」



そう言って、楽しそうに笑うカイ。






「うん。そろそろ私、世界を動かしたいと思ってる。」



情報は武器になる。


使い方次第。使う人次第。あとはタイミングと、誰に使うか。




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