(二)この世界ごと愛したい
私は地図に没頭。
その間にアキトはトキの部屋を出て、みんなへお土産を配ったり。稽古のため購入した物を部屋に運んだり。
トキはそのまま部屋で仕事の続き。
「…トキさん、お夕飯ですよー。」
「うん、すぐ行く……あーごめん。やっぱり俺とリンは後で食べる。」
アキトの部屋と違って、ハナちゃんは閉められたドアの向こうからトキに声を掛ける。
それはトキが女の子に対して一線引いていることの現れで。ハナちゃんもそれを察しての配慮。
ちなみに、この会話も地図に全集中している私には届いていない。
「わ、わかりました。」
私がこの部屋にいることに驚きつつも、トキの言う通りにしたハナちゃんはすぐにこの場を離れる。
「…昔のシオンを見てるみたいだ。」
懐かしそうに呟いたトキ。
私はそれにも耳を傾けず、夜が更けても尚も地図との睨めっこを止めない。
「トキー。」
「アキト、ちょっとどうにかして。俺もしかして寝れないの?」
「リンあれからずっとあのままか!?」
「そうだよ。ちょっともう連れてって。明日朝から稽古だって覚えてんのかな?」
いつまで経っても戻ってこない私。
そしてご飯もお風呂もまだの私とトキを心配してアキトが戻ってきた。
そしてこの状況を見兼ねたアキトが、私の肩を叩く。
「……ん。」
「リンとりあえず飯!風呂!んで寝るぞ!!!」
「…んー。もうちょっと。」
「せめて明日にしろって。トキも休めねえだろ。」