(二)この世界ごと愛したい



誰か、助けようとかないんです?


人はいるはずなのに、どうして誰も助けてくれないんです?




「こ、の邪狼っ…。」


「エゼルタに来るのまだですか?」



こんなに辱められて誰が行きたいと思うんだ。




「…もう知らない。」


「……。」


「あとエゼルタから私を追いかけて来る兵のこと勝手に止めるのやめて。」


「何で知ってんだよ。」


「とにかくやめて。」



言いたかったことは言えたので。


私はお店が開店するまで、カイの言葉に甘えて上の階でダラダラしようと思った。



…階段を登ろうとして足を止める。


そう言えばシオンは、人付き合いが悲しいほど出来ないんだと思い出した。




「また挨拶もなしなの、無礼者。」


「…はぁ。」



嫌そうに溜め息を吐きながら。


トキ同様、私の側まで来て頭に手を乗せて。




「それ以上近付かないで。」


「…あんた本当ムカつく。」


「誰が悪いの。」


「相変わらずハルのことばっかで、腹立たしかったから。」


「まずは自分の非を認めなさい。」


「…はいはい。」



エゼルタの暗雲が晴れるまで、もう少し時間が掛かる。


だから、それまでどうか耐えてほしい。





「私も頑張るから。」


「キスの上達?」


「違いますっ!!!」



下手で悪かったな!?!?




「…じゃ、また。」


「もうシオンなんか知らない!早く行きなさいたわけ者っ!」


「たわけって…。」



これはまた珍しく、シオンが不意に笑うので。


この場の全員の目が丸くなる。




「次会った時またムカつく顔してたら、本気で食い荒らすんで。お覚悟を。」


「っ!!!」



ムカつく顔ってまた言われた!?


覚悟って何の覚悟だ!?




「少しは自重しなさい!!!」


「あーはいはい。」



シオンはそのまま私から離れ、トキと共にお店を出る。



人で散々遊んでおいて、あっさり帰って行ったシオンに更に腹を立てつつ。


さっきのキスがまた脳裏に蘇る。




「…寝るっ!!!」



なので居た堪れない私は、残ったカイとおーちゃんに寝ると吐き捨てて二階へ逃げ込んだ。




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