(二)この世界ごと愛したい
悪びれる様子もないシオンだが、少しだけその表情は暗い。
その理由が、今回のハルの戦。
「…ハルの戦はいつも意味不明だけど今回は度を超えてる。彼女が心配するのも無理ない。」
「完全に本能のまま突っ走るタイプだもんね。リンのことそこまで分かってて、何でシオンはリンの嫌がることばっかしてんの。」
「…。(あれは嫌がる事、なのか。)」
「ユイ姫と同じにしちゃダメだよ。最近まだマシだけど、リンは男慣れしてないの。スキンシップは程々にしなきゃ無駄に警戒されて終わりだよ。」
終わり…と。
小さく呟いたシオンに、トキが笑う。
「けど、シオンが怒られてるの珍しくて俺は楽しい。」
「…楽しくない。」
こうして。
パルテノンから一度アキトの城に戻り、それから各々行くところがあるためすぐに別れる二人。
「とりあえずハルの現在地だけ鷹飛ばして。」
「了解。」
「…彼女のことも著変あれば。」
「そっちがメインでしょ。」
不器用な兄を笑い飛ばす弟。
トキはこれからハルの戦の観戦。レンの付き添いでソルまで行ってるアキトと合流する予定らしい。
「別に。変わりないならいい。」
「リンが情報屋で働いてるって聞いた時は驚いたけど、行ってみたら違和感あんまりなかったよね。危ないことに巻き込まれないといいね。」
「…パルテノンの第一将が側にいる。」
「不当な扱いは受けないよ。リンは可愛いから。」
おーちゃんに対して戒心を怠らないシオン。
それはおーちゃんを決して侮っていない証拠。
「あの瞬兎が本気で剣を抜くなら、彼女の身の安全は守られるだろうな。」
「へえ、そんなに強いの?」
「本来もっと早く第一将の椅子に座れてたけど、戦嫌いで戦場に基本出て来ない。でも出て来た戦はほぼ全勝。」
「…相手が良かった、とか。」
「今ハルが相手してるソルの第一将の軍にも一度勝ってたな。」
トキは驚くが。
たぶん私もその事実を聞けば驚くと思う。
一度軽く手合わせはしたものの、私もそこまでではないと感じていた。
「シオンは負けないでしょ?」
「当たり前。」
「…だよね。アキトは勝てるかな。」
「タイプが似てるハルとアキトは、たぶん苦手だろうけど。」
それを聞いて、眉を顰めるトキだけど。
戦嫌いのおーちゃんが戦場に立つこと自体非常に珍しいらしいので、問題ないだろう。