(二)この世界ごと愛したい
そんなシオンが唐突に、良きお兄ちゃん感を表す。
「…お前がいて負けることもないだろ。」
「……。」
「…?」
「…え?なんて?」
しっかり聞こえていたはずのトキが、思わず自分の耳を疑ってしまうほど。
これは極めて稀である。
「…また来る。」
「…え…あ、うん。気を付けて…ね。」
シオンが去った後も。
トキはしばらく立ち尽くしたまま。状況を整理して、正気に帰り、嬉しそうな笑みを浮かべて城の中へ。
「トキさんおかえりっす!」
「ただいま。」
「…なんか良いことありました?」
城に戻るや否や、声を掛けたのはサク。
そんなサクが気付いて聞いてしまうほど、トキから嬉しい感情が溢れていた。
「んー、ちょっとね。」
「…リンちゃんっすか?」
「リンにも会えて嬉しかったけど。俺にとっては、それより嬉しいことだった…かもね。」
背中を追い掛け続けている兄に、褒められることがどれ程嬉しいことか。私も良く分かる。
そんなことに兄と言う人は気付かないが。
私も、いつか。
そんな風にハルに認めてもらえるようになりたいと、常日頃考えている。
だけど現状。
ただ、桜の日が訪れる春を待つことさえ覚束ない私は到底認めてはもらえないんだろう。
周りの人にかなり気を使わせてしまっていることも分かってはいるんだけど。
私は中々強くはなれない。
それでも、また会えるその時を信じて。
今は優しい人達に支えてもらいながら、私は今日も明日も、ハルを待つ。