(二)この世界ごと愛したい
師弟関係
「コラ、そこ右で受けんな。左使え言うてんねん。」
「だって今までの癖で利き手で捌きたくなっちゃうんだもん。」
「その癖を修正せなあかんって話をしてんねん。」
「…そんなこと言ったって。」
カイと聖地を訪れ。
シオンとトキが来店したあの日から、またしばらく時は流れた。
そんな今日は、おーちゃんとお稽古。
しかし、場所はパルテノン王都ではなくパルテノンのとある街。
「はー…頭の硬い弟子や。」
「むー。」
ようやくアレンデールの鍛冶屋へ行くため。
カイから二人での外出許可が降りた。そして目的地がアレンデールである以上、飛んで移動すると目立ってしまうのでお忍びで馬車移動。
「剣が軽くなったら左ももっと使えるかも?」
「そらそうやけど。癖は中々治らんから意識して変えるのが近道やで。」
「師匠厳しい。」
「…こんな優しい師匠おらんわ。」
それは確かに。
おーちゃんは意外と的確に私のウィークポイントを教えてくれる。本当意外と。
そしてパパみたいに頭ごなしにガミガミ言わないから、素直に聞き入れやすい。マジで意外と。
こんな時、おーちゃんは歳上なんだと改めて思う。
「お嬢は国に帰るの抵抗ないん?」
「抵抗?」
「…悪者のフリして追放させたってカイに聞いたし。国の連中はお嬢のこと悪者やと思ってるかもしれんし。」
薄々は気付いていたんだけど。
そんなことをカイに話した覚えはない。勝手に気付いて勝手におーちゃんに話したんだろう。
「悪者だと思ってくれてるなら好都合だよー。」
「それで今から非難されたら辛いやろ。」
「あ、それは大丈夫。私のことを姫だって認知してる人少ないから。」
そもそも城の外に出れること少なかったし。
火龍の力で皆さん私をアレンデールの姫だと認識している節があるので。力さえ使わなければ、誰も私だとは気付かないだろう。
「姫やのに、分からんの?」
「私の行動範囲は城の中だけだったもん。だから本当なら私が案内してあげなきゃいけないのに、知らなくてごめんね。」
「…城の中、だけ…か。」
「戦の時は出られたよ。たまに脱走もしたけど、王都から出られたことはないから。ミケさんに脱走の手順を学んでみたい。」
御者さんとお馬さんの休憩のために立ち寄ったお茶屋さん近くの開けた場所で、おーちゃんに久々に剣を交える許可を貰ってお稽古中。
そこで私がミケさんからも学びたいと言ったことで、おーちゃんは面白くなさそうに口を尖らせる。