(二)この世界ごと愛したい
色んな職人さん達が活気良く建ち並べる店の中、一軒のお店の前で立ち止まったおーちゃん。
ここが目的地なんだろうが、おーちゃんが少し顔を顰めた。
「おーちゃん?」
「…とりあえず入るけど。お嬢はちょっと顔伏せとき。」
「え?」
そう言って訳が分からないまま、おーちゃんに手を引かれてお店に入る。
「あ、ハニー!待ってた…で……。」
「久しいな。前もって伝えてた通りやから。よろしゅう。」
店内にはおーちゃんと顔見知りのようなお兄さんが一人。
今日の依頼は事前に共有済らしく、淡々と終わらせたいっぽいおーちゃん。
…ハニーってなんだ???
「お、女…。」
「あーもうええって。お嬢とりあえず剣貸して。」
顔を伏せろと言われていたので、一応言う通りにしていたが。もういいんだろうか。
「う、わ。うわうわうわ。マジか。」
私が恐る恐る顔を少しだけ上げると、お兄さんが目を輝かせて私を見ている。
…え。何怖い。
「アホ!まだ下向いとけ!」
「そんなこと言われ……て…も?」
私が反論しているその一瞬。
視界では確かに、この場の二人が動いた。
初めに動いたのはお兄さん。私に向かって走り出そうとしたのは分かった。
けど次の瞬間、私の足は地面から浮いていた。
「堪忍な、兄貴。このお嬢は嫁候補にはやられへんから。」