(二)この世界ごと愛したい



「剣はやっとくけど、もう一個の依頼は先渡そか?」


「せやな。」


「金は?」


「お嬢、金。」



その場に沈黙が走る。


金、うん。確かにお代は払わなきゃいけないね。




「……。」


「…まさか忘れたん?」


「忘れた…と言うか。持ってない…。」


「…え、俺もそない持って来てへんで。」



この時間が惜しい、こんな時に。


元々鍛冶屋に行くと言う話だったから、代金は準備しているだろうとおーちゃんは思っていたらしいが。るうに貰ったお小遣いは底を尽きていた。




「カイに付けといてもらう?」


「うち付け払いやってませんねん。」



こんな時は私に悶えることもないお兄様。


どうやら金銭感覚に関してはかなりシビアな様子。



アレンデール城なら近い。飛んで行けば時間を掛けずに戻って来られる。るうに頼めばお金は問題ない。


だけど今の私は、昂る感情を抑えきれない。


その時間さえも待てそうにない。私は今すぐにおーちゃんと稽古がしたい。





「…お金は後日お支払いします。この場はこれで、収めていただけませんか?」



私は懐から、桜の花の将印を見せる。








「は…?」



この国では、ハルの名前に動じない人はいない。


おーちゃんのお兄様で、他国から移住した可能性がある人でも、ハルの恐ろしさを知らないなんてことはない。





「き、鬼人…の将印……え?」


「と言うか、面倒なので支払いもハルに頼んでおきますね。」


「は、ハル…て……え?」


「もういいですか?」




< 772 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop