(二)この世界ごと愛したい
「剣はやっとくけど、もう一個の依頼は先渡そか?」
「せやな。」
「金は?」
「お嬢、金。」
その場に沈黙が走る。
金、うん。確かにお代は払わなきゃいけないね。
「……。」
「…まさか忘れたん?」
「忘れた…と言うか。持ってない…。」
「…え、俺もそない持って来てへんで。」
この時間が惜しい、こんな時に。
元々鍛冶屋に行くと言う話だったから、代金は準備しているだろうとおーちゃんは思っていたらしいが。るうに貰ったお小遣いは底を尽きていた。
「カイに付けといてもらう?」
「うち付け払いやってませんねん。」
こんな時は私に悶えることもないお兄様。
どうやら金銭感覚に関してはかなりシビアな様子。
アレンデール城なら近い。飛んで行けば時間を掛けずに戻って来られる。るうに頼めばお金は問題ない。
だけど今の私は、昂る感情を抑えきれない。
その時間さえも待てそうにない。私は今すぐにおーちゃんと稽古がしたい。
「…お金は後日お支払いします。この場はこれで、収めていただけませんか?」
私は懐から、桜の花の将印を見せる。
「は…?」
この国では、ハルの名前に動じない人はいない。
おーちゃんのお兄様で、他国から移住した可能性がある人でも、ハルの恐ろしさを知らないなんてことはない。
「き、鬼人…の将印……え?」
「と言うか、面倒なので支払いもハルに頼んでおきますね。」
「は、ハル…て……え?」
「もういいですか?」