(二)この世界ごと愛したい
頭で考えてから動くタイプの私は、精一杯まずは頭を働かせる。
それを見ておーちゃんが呆れる。
「ほんま頭固いな。ほな、今俺が鬼人やとしたらお嬢はどうするん。」
似ても似つかない二人だけども。
もし、今目の前にハルがいるとしたら。
それはたぶん頭で考えるより先に、動けてしまえるような気がする。
「っ…!?」
きっと、こうしてその胸に飛び込んでしまう。
突然私に抱きつかれたおーちゃんは、少し驚いて。驚きつつも受け止めてくれて。さらに強く抱きしめ返してくれる。
「…はるー…。」
「あーはいはい。鬼人の名前出せば簡単やな。」
「でも本当に会いたくなっちゃうから程々にするー。」
「恋人かっ!」
あーもう手遅れかもしれない。
だって。頭ではちゃんと別人だと分かっているのに、この手を離すのが怖いと思ってしまっている。
「…ほんとはね。今日おーちゃんとお兄さんが話してる時、すっごく羨ましかったの。」
「あれがか?あんな兄貴でええなら貸すで?」
「それはいい。でも、自慢の弟だって言われてたのもいいなって思ってた。」
「俺は優秀やからな。」
それは、私がずっとハルに言ってほしいと思っている言葉と相違なくて。
そんな風に認めてもらいたいから。
そして何よりも、とにかく。
「ハルに会いたい…っ。」
弱い私を、一番許せないのは自分自身。
きっとこれからも許してあげられない。でも今は、目の前にいるのはハルだと思い込んでいたい。
「俺も会ってみたいわ。お嬢を泣かせる男。」
「泣いでないっ!」
「あーそうかそうか。俺の勘違いやな。」
おーちゃんは優しい。
稽古の時は、そんなに甘くないのに。こうして甘えてもいいよと言ってくれる。
久々に吐き出した弱音は、不思議と私の心を少しだけ楽にしてくれた。
「…ありがと。」
だから、感謝を伝えて。
早くご飯食べて休ませてあげなきゃと現実に戻る私は、おーちゃんに回した腕を緩める。