(二)この世界ごと愛したい
「ハニー面食い。」
「兄貴に言われたないわ。」
「いや、あの子以上は正直おらんて。名前何やったっけ。」
「…俺も呼んでへんのに教えへんわ。」
たぶんこの流れで名前を言えば、私がこの国の姫でハルの妹だとバレてしまう。
おーちゃんのナイスフォローだ。
「え、ハニーのヤキモチ可愛い。」
「やからハニー止めろて!」
仲良し兄弟は、戯れ合いながら少し話して解散。
おーちゃんはまた宿に戻り、そろそろ私を起こそうと部屋にやって来た。
「…ん?お嬢起きとったん?」
「う、ん。」
「珍しいな。雨でも降るんかな。」
「…降る。」
そうなんだ、雨が降るんだ。
だから普段はまだ寝ている時間帯にも関わらず、目が覚めてしまった。
「また…空気が変わった。」
たぶん、総大将同士が相見える時が近い。
前回空気の流れが変わった時は、行方不明だとされていた。結局単騎で敵陣に突っ込んでいただけだった。それも本来大問題なんだけど。
だから今回も大丈夫だって…思いたい。
「…ハルに雨は似合わない、ね。」
ハルの戦時は、基本雨は降らない。
だからこの雨の気配は、私の不安を煽る材料になる。
「お嬢?」
「…しっかり、しなきゃ。」
パンっと顔を叩いて。
ちゃんと顔を上げて。
…前を見ろ。下を向いてる時間はない。
「よし。」
「よしちゃうわ!何やねん!?」
「たぶんソルの第一将とそろそろ会うみたい。ハルも頑張ってるから、私も頑張らなきゃ。」
「そんなん分かるん?天才なん?」