(二)この世界ごと愛したい
イヴはそんな二人に、良かれと思ってまた言葉を投げる。
「良いんですよカイさん。あの姫については公にならないことが多かったので知らないことも多いでしょう。」
「知らんこと?」
「…罪深き者なのです。嘆かわしく、殺してしまいたい程に。」
私を思い出し漏れ出た殺気。
そこで私も触っていた駒から手を離し、様子を窺うため階段の側まで来た。勿論帯剣済みです。
「なので、もし殺していただけた場合はこの百倍の報酬をお支払いしましょう。」
「…捕える方で努力はしますわ。」
「善良なお人だ。では、よろしく頼みます。」
「一つ目はまた国に纏めて書状送りますわ。二つ目は折を見て少しずつ始めて行く感じで。」
もう早くイヴを帰したいことが分かってしまうくらい、カイは急いでいた。
急いでいるのは、このイヴの圧が鬱陶しいから。
そして、現場のおーちゃんからももう、隠せない程の殺気が漏れ出しているから。
…やっぱ面倒な流れになっちゃうのね。
「幼子が放つ殺気ではないですな。」
「そら堪忍。どうも我慢は苦手でな。」
「やはり幼子よ。では私はこれで。くれぐれも反故にはせんでくださいね。あの罪人だけは生かしてはおけんのです。」
ようやく帰る様子のイヴに、私とカイはホッとするが。
「どう見たって、あんたの方が罪人顔やけどな。」
「…ほう。」
ホッとしたのも束の間、私は自分の剣に手を添えるしかなくなった。
「見たんですね。あの姫の顔を。」
メラメラと燃え上がる炎の如く、イヴの殺気が膨れ上がる。
その背中の大錐に手が届くその前に、私は動かざるを得なかった。
瞬時に炎を使って強引に加速。
そのままドアに向かってイヴへ斬り掛かる。
爆音と共に店外へ飛び出す形になった私とイヴは、久々の再会を果たす。