(二)この世界ごと愛したい
「っごめん…。」
「…だからお前は馬鹿者なのだ。泣く程想っておきながら…何故ハルさんから離れる。下らん答えならここで殴り殺す。」
掴み掛かった手を解いたイヴ。
「その答え、今は言いたくないから。殺したかったら殺せばいいよ。」
「…見上げた覚悟だ。」
「…ごめんね。」
「謝るくらいならば、ハルさんの願いから…貴様の使命から逃げるな。」
ハルの側で、小さな世界を守りながら生きて行くのが私の使命らしい。
…それも大義だな。
「イヴ。」
「……。」
「…名前、呼んでくれて嬉しかったよ。」
「…この大馬鹿者が。」
これだけ喧嘩するのは、ハルが戦に倒れ眠り続けたすぐ後以来か。
あの日もこっぴどく怒られて。お互いに疲れながらも二人で泣いて泣いて。そうして正面からぶつかって来て、私と本気の喧嘩をしてくれる数少ない人だ。
そんなイヴの背中に、コツンと頭を寄せる。
「ありがとう。」
ハルをそんなに大事に想ってくれて。
守ろうとしてくれて。
…本当に、ありがとう。
「私にもしものことがあったら、ハルのことよろしくね。」
「貴様に頼まれるまでもないわ。」
「…だね。」
「早くアレンデールへ行くぞ。」
あ、まだ諦めてなかったのね。
「やだー。」
「貴様まだ逃げる気か!?」
「カイがイヴのこと好きなんだって。だから、私を殺したくなったらここに来るといいよ。その代わりカイとお話してあげてくれる?」
「えっ…カイさんが儂を…!?!?」
ポッと頬を染めて気持ちの悪い顔をするイヴ。
引き篭もりなもので、対人関係に大いに障害を抱えているんです。拗らせてるんです。
「イヴももっとお外に出ておいで?楽しいよ?」
「…ハルさんに会いたい。」
「それは私も同じー。」
「ならば今すぐ帰らんかっ!!!」
余計なこと言うとエンドレスだな。
「まーうん。その内ね。」
「殺すぞ貴様!?」
「まだまだ元気だねー。おーちゃん相手変わってー。」
頑丈なイヴは再び闘志を露にするので、疲れた私はおーちゃんに頼む。
「…せめてこの過酷な戦。勝利の後は誰よりもお前が最前でハルさんを待て。それがハルさんは何より嬉しいのだ。」
「…はいはい。」
「お前はハルさんに生かされているに過ぎん。勝手な行いは大概にしろ。」
「あーもう分かったって。イヴしつこい。」