(二)この世界ごと愛したい
「ほう。しかし、それでもあの娘は御せんだろう。」
「御すて何やねん!?さっきからそれが腹立つ言うてんの分からんのか!?」
イヴのこの私を蔑みまくる言い回しは、癖なんですよ。仕方ない事情もあることを知っているから私は気にしないけど。
正義感溢れるおーちゃんには耐え難いらしい。
「どこが良いのか分からん。」
「一生分からんでええわ!!!」
二人の言い合いに巻き込まないで欲しいんだけど。
「その娘の命は尽きるまでハルさんの物だ。そこに手を伸ばしたところで虚しいだけだ。」
「お嬢は物ちゃう。」
「そして今ハルさんの手から離れた今、その娘が進もうとする道は……」
流石にここは黙っていられない私は、非常に残念なことに再び剣を抜く。
間に入っておーちゃんには悪いと思いつつ。
それでも、その口を塞がねばならない理由が私にもある。
「ちょっと喋り過ぎかな。」
火龍の力も駆使したフルスピードで。
イヴの喉元に剣を突き付ける。
「これまた珍しいな。お前がルイ以外の人間に対して、そこを嫌うのか。そう殺気立つ程に何を恐れる。」
「…ほっといて。」
「人に執着せず信用もすることもないお前が、繋がりに目覚めたか。」
「もうめんどくさいって。」
あーもうほんとに嫌だ。
突き付けた剣に思わず力が入り、イヴの血が伝う。
「私の道を勝手に語らないで。」
「…そうか。持ち合わせなかった感情が芽生えたか。」
「そろそろ本当に怒るよ。」
イヴは柄にもなく楽しそうに笑う。
目元が優しく垂れる、その笑顔は今まで私には向けられたことは一度もなかったのに。
「なあ、リンよ。」
「っ…。」
「ハルさんはお喜びだろうなあ。」
また名前を呼んで。私に芽生えたその感情を、ハルは喜ぶことだろうと。
イヴはそう言ったけど、私からすれば怪しいところだと思った。
「余計なことばっかり喋らないで。安心していいよ。私、死ぬ時はちゃんとイヴに殺されたいと思ってるから。」
「ああ勿論だ。その時はしっかり地獄に送ってやる。」
私は流石に疲れがピークで、瞳の色を変えてしまったことを今頃後悔する。
まだ休もうにもイヴがまた不要なことを言わないか心配で中々この場を離れられない。
そんな私の耳に、カイへの伝者の声が刺さる。
「アレンデール軍が援軍要請です。現在戦神の副将が戦場へ向かっています。」