(二)この世界ごと愛したい



私にほぼ部屋を追い出される形になったカイとおーちゃんは、二人で下の店にいる。


若干戦闘の跡が残ってしまったのを、カイが黙々と片付けている。




「…カイ。」


「何や。てか、お前手伝えや。」


「俺白狼に会いに行って来る。」


「やから手伝え…は?」



突然何を思ったのか、おーちゃんはシオンに会いに行きたいと言い出した。




「会ってちょっとお嬢のこと聞いて来る。」


「お前はまた…。今はバタバタしとるから無理やし、第一白狼が何知ってんねん。お嬢が可愛くて堪らんことしか知らんやろ。」


「お嬢がアレンデールから出たのを、英断やって言うてた意味が知りたい。」


「お前は好奇心旺盛な子供か。」



呆れ返るカイだが、本気のおーちゃんは後日。本当に有言実行することになる。


片付けを終えて、この後の酒場の営業は臨時休業することを決めたカイ。




「アレンデールって良く分からん国やわ。」


「はあ?」


「お嬢のこと、大事で大切な姫やって言う割にやってること監禁と同じやで。明らかに苦痛を強いられてんのはお嬢やのに、皆んなして鬼人が可哀想やって言う意味が分からん。」



言いたいことは分からんでもない。


かなり真っ当なおーちゃんの疑問に、カイは溜め息を吐く。




「…一応、鬼人も巫女の血統やろ。要は覡…巫女の男版な。それに当たるんやけど。覡は太陽に愛される恵まれた子であることが多い。あの鬼人は正にそれ。」


「しょうもな。それが何なん。」


「あの武力で、天候に恵まれた王子の扱いが他と違うもんになるってことは明白やろ。」


「そんな下らんことでお嬢は不自由になるん?」


「アホ。そこはお嬢の魔女の力あってのことやろ。人に愛される王子と、神に愛される姫の物語や。」


「…わっけ分からん。」



カイの推察は概ね正しい。


ハルは産まれてから、長男であったことも大きいかったが、その圧倒的武力、飾らない性格、何より妹想い家族想いの人柄。


愛されない理由が何もない。



それに加えて、天候はいつもハルの追い風となる。覡事実を知る者は、それはそれは有り難い恩恵と捉える。





「お嬢はどうしたって姫やし、いずれ後継することも考えれば鬼人に注力するんは必至。どの国もそこは同じやろ。」


「…はー…。よく分からんけど分かった。」


「どっちやねん。」


「つまりあれやな。下らんその国から姫を救い出すっちゅう物語に変えたらええんやな。」



思わず目が点になるカイ。


おーちゃんの馬鹿げたその思い付きは、カイにとっては驚きでしかない。





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