(二)この世界ごと愛したい



「いや、無理やで。」


「無理って何やねん。」


「それにはお嬢の同意が必要。お嬢がそれを望むわけないやん。」


「今はって話やろ?」


「前向きか。お前そんなんやったら鬼人には会わん方がええよ。」



カイは年の功での経験も踏まえて、おーちゃんを諭す。





「そんな気持ちで会ったら、打ちのめされるんはお前や。」


「…俺もう頭使い過ぎてしんどいわ。」


「ほな俺帰るわ。」


「え、俺が残るん!?」



おーちゃんはてっきりカイが残ると思っていたらしい。


私の看病をするのは、自分よりもカイが適任だと思っていたから。




「残ってやりたいんは山々やけど。あんだけ熱高かったら食欲なんか沸かんやろうし。俺がおったところでなー。」


「……。」


「やらしいこと考えるなよ。相手は病人やで。」


「かっ、考えてへんわアホ!!!」



真っ赤になるおーちゃんを見て、どっちやねんと笑い。


そして真剣な顔に戻ったカイが、おーちゃんに頼み事をした。




「とにかく側におったり。たぶんまた泣いとるやろうから。」


「…また?」


「今日は色々あったし。弱い自分が許されへんねん。普段はどうにか頑張ってるけどな。あの子、元々そんなに強くないんよ。」


「頑張り過ぎなんよな。」



うんうんと二人で頷き合って。


カイはお店を出る前に、もう一声おーちゃんに伝えた。





「それに、世界で一番大事な人間が戦場におるって。お前の方が気持ち分かってやれるやろ。」




カイが出て行ったドアを見つめて、おーちゃんはまた切なそうに顔を歪める。


この時考えたのが、私なのかヒマリさんなのかは不明だが。



それを言われてしまっては放っておけず、私の眠る部屋に足を運ぶ。





< 857 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop