(二)この世界ごと愛したい
そして立ち上がりたいがどうしようか。
寝起きの無力に邪と装具が合わさり、力が入らない。
「おはようさん。」
「っ。」
いつの間に近くに来たのか、おーちゃんが瞬時に私を抱えカウンターに座らせてくれた。
「どうせカイのコーヒー飲むんやろ?」
「…飲む。」
「まだ大人しくしとき。」
「…ありがと?」
これにアキトは驚く。
そして意外にもトキも驚く。
「瞬兎…か。」
「初めて本物見た。」
なるほど。
私は最近おーちゃんの瞬間移動をずっと見ていたから目が慣れたのだろうけど。
二人はまだ見慣れてないから、最初の私と同じで目で追うのも難しいんだ。
「カイさんっ!」
慌ただしく、酒場のドアが開き。
カイの伝者の人が何かを伝えにやって来た。
「アレンデール軍勝利で戦終わったよ。」
ようやく、私の胸の蟠りが溶ける。
「流石鬼人やなあ。とりあえずもう少し追って。鬼人がアレンデールの国境跨いだら報告頼むわ。」
カイの言葉に頷き、伝者さんは去る。
「良かったな、お嬢。とりあえず鬼人が国境越えたらアレンデールに帰国しておいで。」
「…うん。」
「…元気出た?」
「…出た。」
ご心配おかけしました。
そう心を込めて、私は力が抜けた笑顔が漏れた。
「可愛えー…。」
「リン!祝い酒だ!飲むぞ!!!」
可愛いと悶えるカイも、酒を飲むと騒ぐアキトも、私はここは一度放置。
置いていたままにしていた地図に目を向ける。
勝利は勝利で嬉しいことだが、そこだけを考えてばかりもいられない。
「…援軍、結局何に使ったんだろ。」
「おいリン、酒!!!」
「もうアキトうるさい。勝手に飲めば。」
「お前仕事しろよ!!!」
「仕事?」
つまり、私がここで働いていると聞いてやって来たんだな。
「うちのお嬢は基本飲むのが仕事やから。妓女みたいなことはさせてへんねん。」
「はあ?やらせろよ?」
「そんなことしたら益々大繁盛やけど、客達の暴動起き兼ねへんし。」
「…確かに。」
カイに意味不明な納得をさせられたアキト。
しかし、酒を飲むことは諦めないそうで。カイからお酒も貰って結局飲み始めてしまった。
「リン、シオンから連絡来てない?」
「え?ないよ?」
「そっか。」
「シオンどうしたの?」
「連絡取れなくてさー。やっぱ何か気になるし、アキト俺もちょっと帰国して来てもいい?」
どうやら音信不通のシオンさん。
シオンがマメに連絡することの方が珍しいと思うんだけど、トキがこんなに心配している様子だから、たぶん何かあったんでしょう。
今はそこに考えを割く余裕はないので、トキに任せましょう。