(二)この世界ごと愛したい



「リンは見て来たでしょ?」


「だって、ハル私が戦場にいると私のことしか見てないもんっ!あんまり本気で戦ってくれないのっ!!」


「…あー…うん。どんまい。」


「いいなー。私もハルに…。」



本当に良い加減、会いたいなー…。


それもきっともうすぐだ。いつもの流れなら、きっと行軍は他の人に任せて一目散に帰るはずだ。



ソルから爆速で馬を走らせれば、ハルなら明日…もっと巻いて今日かも。




「ねえねえ、アキトとトキは大将戦見て来たんだよね?」


「うん。」


「敵将どんな感じだった?」


「ハゲてた。」



は…ハゲ…???


なんか想像と違う…かも???




「強かった?」


「…まあ、あれは…そうだね。リンは嫌いだろうね。」


「嫌い?」


「てか、実際戦った人いるんだし。そっちに聞いた方が早いんじゃない?」



そう言ってトキがおーちゃんを指差す。




「…何年前の話やねん。」


「交戦経験あるんだよね?しかも勝ったって聞いたけど?」


「最終的にはな。中身はもうグチャグチャやったけど。」



結果だけが勝利として終わった戦。


そして、この話になった途端。カイとおーちゃんの顔が曇ったのを見て、これ以上踏み込んではいけないような気がした。




「…あ、そう言えばトキここに来るの早くない?もう少し先だって聞いてたけど?」


「丁度レンの城に行ったら、リンの往診に行くところだって聞いたから便乗した。」


「レン来てたの?」


「リンが起きる少し前に帰ったよ。城の中の患者の対応で忙しいんだって。」




レンらしいと言えば、レンらしい。


つまり私は、お礼も言えず終いになってしまったってことか。






「あ、レンのとこ行くの私が忘れてたんだった。」



そうだそうだ。


呼ばれたのに行かずに、炎の補填もせずにそのまま忘れていた。




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