(二)この世界ごと愛したい
悪いことをしたなと、少し反省。
「落ち着いたら来てって言うてたで。」
「…あー…放っておくとまた面倒だもんなー。」
「俺も心配やから忘れずにちゃんと診て貰いに行くんやで。」
「落ち着いたら、ね。」
ここから落ち着く時間がどれくらいあるか分かりませんが。
出来る努力はしよう。レンって本当に粘着質だから、行かなかったら後が怖いんだもの。
「アキトはハルに声掛けなかったの?」
「馬鹿かお前!戦中に邪魔出来るか!ましてや鬼人に話掛ける度胸は俺にはねえ!!」
「…案外気が合いそうな気もするけどなー。」
「え、マジで!?!?」
いや、マジかは分からん。
私の名前さえ出なければ大丈夫な気はする。
「大将戦は鬼人の猛攻が凄くてね。かなり荒っぽいけど、見てる分には爽快だった。」
「…はあ。」
「あれだけの兵力差もなかったことにしちゃうんだから、流石だったよ。」
「…兵力、差?」
え?アレンデールが少なかったの?
そんなはずはない。仮にも王族…王兄率いる軍だ。それ相応の兵力は準備させられていたはず。
「さっき言ってた城に、鬼人ほとんど兵置いたままだったみたいだけど。あれ何の策だったんだろ。いざって時の予備兵にしたかったのかな。」
「城…。」
「俺ならやらないけどね。やっぱ大将戦に置きたい。」
「私も。」
やっぱり考えてもわかんない。
今回ハルは、開戦してずっと例の城にほぼ全兵力を注いでる。領土や戦果に興味もないだろうハルを動かした何かがそこにあるんだ。