(二)この世界ごと愛したい
私が不貞寝した後、遅れてアキトとトキがお店にやって来る。
昨日同様、上に上がろうとするアキトをカイがちゃんと止めてくれて。ハルの事情を話す。
「鬼人どこ行ったんだあ?」
「どうせアキトと同じで何も考えてないんじゃない?」
「ああ!?」
「…俺なら確かにすぐ帰国はしないかな。現地で後処理も引き継ぎもしっかりしたいし。けど、その場も離れたんでしょ?」
私だって自分が大将ならそうする。
けど、ハルは違う。そんな面倒事を進んでやるタイプではない。
「まあ、俺なら…。」
ここでアキトが、ふと言葉を溢す。
「心配で泣いて、会いてえって泣いて。そんなリンを放ってはおけねえから。」
ハルの感覚の持ち主が、その感覚を言葉にする。
「戦も立場も捨てて、とりあえずリンがいる場所に真っ先に向かうけどな。」
その言葉に。
この場にいるトキ、カイとおーちゃん。それぞれ驚く。
「か、カイさん!オウスケさんっ!!!」
バンっと酒場のドアが激しい音を立てて開き。
伝者が有り得ない伝達事項を話す。
「王都国門前、敵襲です!!!」
「敵襲?」
「鬼人率いるアレンデール軍です!!!」
カイはそれを聞いて、頭を抱えた。
おーちゃんも、信じられないと耳を疑う。
そんな状況も刹那。
一筋の光が店内へ伸びる。
「な…何や?」
その光は二階へ真っ直ぐ伸び続ける。
「あ、これルイのやつじゃない?」
「…だなあ。」
「鬼人の援軍要請って、こういうことか。」